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マーベル・テクノロジー (MRVL)

Marvell Technology Group Ltd

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/10/26

0. この記事でわかること

本記事では、マーベル・テクノロジー(MRVL)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: データセンター向けカスタムAIチップ(ASIC)とデータ処理ユニット(DPU)で急成長する半導体企業として、AI・クラウドインフラ市場の拡大の恩恵を享受
  • 事業内容と成長戦略: データセンター・エンタープライズネットワーク・ストレージの3分野で半導体ソリューションを提供。AWSとの5年間提携やMicrosoftのカスタムチップ「Maia」量産開始で成長加速
  • 競合との差別化: NvidiaのGPUと組み合わせて使われるDPU、光インターコネクト技術、カスタムASIC設計力で差別化
  • 財務・配当の実績: 2026年度Q2で収益58%増、データセンター事業が売上の74%を占め69%成長。配当利回り0.3%前後と控えめ
  • リスク要因: 顧客集中リスク(Amazon・Google・Microsoft依存)、半導体サイクルの影響、競合激化(NVIDIA、クラウド企業の自社チップ開発)

この記事を通じて、マーベル・テクノロジーの成長性と投資リスクを理解し、投資判断の材料としてください。

1. なぜマーベル・テクノロジー(MRVL)が注目されているのか

マーベル・テクノロジー(Marvell Technology Group Ltd)は、データセンター向けカスタムチップ、ストレージコントローラー、ネットワーク半導体で強みを持つファブレス半導体企業です。AI・クラウド・5Gの成長で業績拡大が見込まれる「成長株」として投資家の注目を集めています。

(1) 成長戦略の3つのポイント

マーベル・テクノロジーは以下の3つの成長戦略を推進しています(2025年Q2-Q3決算より):

  1. カスタムAIシリコンへの注力
    AWSとの5年間提携でAIとデータ接続製品を共同開発し、Microsoftのカスタムチップ「Maia」の量産を開始しました。複数の新規設計案件を獲得し、カスタムAI半導体分野での存在感を強化しています。XPU(GPU、TPU、NPU等のAI処理用プロセッサ)を取り巻く幅広い周辺技術で優位性を確立しています。

  2. 戦略的事業再編
    2025年4月に自動車イーサネット事業をInfineon社に25億ドルで売却し、AIシリコンと光インターコネクトなど次世代ソリューションへの資本配分を強化しました。コアのデータセンター・エンタープライズ・キャリア市場へのリソース集中により、成長ドライバーに注力する戦略です。

  3. R&D投資の拡大
    2025年度のR&D費用は19.5億ドルで売上の33.82%を占め、3年間のCAGR 25%を目標としています。データインフラ半導体市場でのイノベーション加速により、競争優位性を維持する方針です。

(2) 注目テーマ(カスタムAIチップ・データインフラ半導体・光インターコネクト)

投資家が注目するテーマとして、以下の3つが挙げられます:

  • カスタムAIチップ: Amazon、Google、Microsoftなど大手クラウド企業向けにカスタム設計されたASIC(特定用途向け集積回路)を提供。AI関連収益が総収益の50%超に達する見込みで、2026年度のAI関連売上は25億ドル超の予測です。
  • データインフラ半導体: データセンターのコアからネットワークエッジまでの包括的なソリューションを提供。コンピュート、接続性、ストレージのアクセラレーテッドインフラポートフォリオでAI時代を牽引しています。
  • 光インターコネクト: 2021年にInphi(光通信半導体)を100億ドルで買収し、データセンター内の高速通信を光ファイバーで実現する技術を強化。データ転送速度の向上により、AI・クラウドインフラの性能を支えています。

(3) 投資家の関心・懸念点

関心点:

  • アナリストコンセンサスは「買い」で、平均目標株価94.68ドル(13.95%上昇余地、2025年10月時点)。
  • EPS成長率は2025年の1.57ドルから2028年には4.32ドルへ175%上昇見込み(2026年度78%増、2027年度28%増、2028年度21%増)。
  • 5G、AI、データセンターという成長分野に強みを持ち、エンタープライズ向けAI・クラウドインフラ市場の大きな潮流に乗る立ち位置です。
  • 50億ドルの自社株買いプログラムを承認し、経営陣の自信を示しています。

懸念点:

  • データセンター収益とガイダンスが期待を下回り株価18%急落(2025年8月)。ASIC事業への期待が高かっただけに、投資家を失望させました。
  • Amazonでのシェア喪失懸念。Trainiumチップ(Amazon独自開発)の立ち上げ遅延により、将来収益への影響が懸念されています。
  • 一部アナリストはBank of Americaが中立に格下げ(目標株価78ドル)、Barclaysも中立に格下げするなど、短中期的なAI成長見通しへの慎重な見方も存在します。

2. マーベル・テクノロジーの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業(データセンター・ネットワーク・ストレージ)

マーベル・テクノロジーは3つの事業セグメントで構成されています:

  1. Data Center(データセンター): カスタムASIC、DPU(データ処理ユニット)、イーサネットスイッチを提供。売上の74%を占め、69%成長(2026年度Q2時点)。Amazon・Google・Microsoftなど大手クラウド向けカスタムチップが成長ドライバー。
  2. Enterprise Networking(エンタープライズネットワーク): 5G基地局、企業向けネットワーク機器を提供。売上の約20%。携帯電話基地局向け半導体で強み。
  3. Storage(ストレージ): SSD・HDDコントローラーを提供。売上の約20%。ストレージ市場での高シェアを維持。

(2) セクター・業種の説明(情報技術・半導体)

マーベル・テクノロジーはInformation Technology(情報技術)セクターSemiconductors & Semiconductor Equipment(半導体・半導体製造装置)業種に分類されます。ファブレス半導体企業として、設計に特化し、製造はTSMC等の受託製造企業(ファウンドリ)に委託するビジネスモデルです。

半導体市場はAI・データセンター・5Gの成長により急拡大しており、同社はデータインフラ半導体市場での存在感を強めています。

(3) ビジネスモデルの特徴(カスタムASICとDPU)

マーベル・テクノロジーの最大の特徴は、**カスタムASIC設計力とDPU(データ処理ユニット)**です:

  • カスタムASIC: 特定の目的のために設計されたカスタムチップで、Amazon・Google・Microsoftなど大手クラウド企業の要求に応じて最適化されたソリューションを提供。Design Win(設計案件獲得)により、長期的な収益を確保。
  • DPU(データ処理ユニット): NvidiaのGPUと組み合わせて使われるデータ処理チップで、AI推論・ネットワーク処理・ストレージ処理を効率化。GPUがAI演算を担い、DPUがデータ転送・ネットワーク処理を担うことで、全体の性能を向上。
  • 光インターコネクト: Inphi買収により獲得した光通信技術で、データセンター内の高速通信を実現。データ転送速度の向上により、AI・クラウドインフラの性能を支える。

買収戦略(Cavium 2018年、Aquantia 2019年、Inphi 2021年)で新市場への参入と技術強化を推進し、コンピュート、接続性、ストレージの包括的なアクセラレーテッドインフラポートフォリオを構築しています。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業(NVIDIA・AMD・Broadcom)

マーベル・テクノロジーの主要競合は以下の3社です:

  1. NVIDIA: AI向けGPUで圧倒的なシェアを持つ。データセンター向けGPU市場でリード。
  2. AMD: GPU・CPUで競争。データセンター向けEPYCプロセッサで存在感を強める。
  3. Broadcom: カスタムASICとネットワーク半導体で競合。Google向けTPU(Tensor Processing Unit)などで強み。

加えて、Amazon、Google、Microsoftなどクラウドプロバイダーの自社チップ開発も競争圧力となっています。

(2) 競合優位性(カスタムチップ設計力・光通信技術)

マーベル・テクノロジーの競争優位性は以下の3点です:

  1. カスタムチップ設計力: 顧客ごとの要求に応じたカスタムASICを設計し、大手クラウド企業との長期的なパートナーシップを構築。複数の新規設計案件を獲得し、Design Winによる収益を確保。
  2. DPUでの差別化: NvidiaのGPUと組み合わせて使われる立ち位置で、GPU市場での直接競争を避けつつ、AI・クラウドインフラの成長を享受。データ処理・ネットワーク処理・ストレージ処理を効率化し、GPUの性能を最大化。
  3. 光インターコネクト技術: Inphi買収により獲得した光通信技術で、データセンター内の高速通信を実現。データ転送速度の向上により、競合に対する技術的優位性を確立。

(3) 市場でのポジショニング(データセンター周辺半導体)

マーベル・テクノロジーは、データセンター周辺半導体市場でのポジショニングが特徴です。NvidiaやAMDがAI演算(GPU・CPU)で競争する一方、マーベルはデータ処理・ネットワーク・ストレージの周辺領域で存在感を強めています。

データセンター事業が売上の74%を占め69%成長しており、AI・クラウドインフラ市場の成長を捉えています。営業利益率は前年比870bp改善して34.8%に達成し、高い収益性を実現しています。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移(データセンター事業69%成長)

マーベル・テクノロジーは売上高・利益ともに急成長しています。以下は最新決算(2026年度Q2)の実績です:

項目 2026年度Q2 前年比成長率
収益 20.06億ドル 58%増
非GAAP営業利益率 34.8% 前年比870bp改善
非GAAP EPS 0.67ドル 123%増
データセンター収益比率 74% 69%成長
営業キャッシュフロー 4.62億ドル 前四半期3.33億ドルから大幅増

(出典: Marvell Technology Investor Relations, 2026年度Q2決算, Yahoo Finance)

財務ハイライト:

  • 2026年度Q3ガイダンスは売上20.6億ドル(前年比36%成長)で、成長トレンドが継続。
  • AI関連収益が総収益の50%超に達する見込みで、2026年度のAI関連売上は25億ドル超の予測。
  • アナリストは今後数年間に年率23%の利益成長を予測しています。

(2) 配当履歴(配当利回り0.3%前後の低配当)

マーベル・テクノロジーは**配当利回り約0.3%**です(2025年10月時点)。配当性向は10%未満で、成長投資を優先しています。配当を期待する投資家には向きませんが、成長による株価上昇を狙う投資家には魅力的です。

(3) 財務健全性(営業利益率34.8%)

  • 非GAAP営業利益率: 34.8%で前年比870bp改善。高い収益性を実現しています。
  • 営業キャッシュフロー: 4.62億ドル(2026年度Q2)で、前四半期3.33億ドルから大幅増。健全なキャッシュ創出能力を維持。
  • 自社株買い: 50億ドルの自社株買いプログラムを承認し、経営陣の自信と株主還元の姿勢を示しています。

※2025年10月時点のデータです。最新情報はMarvell Technology公式IRページをご確認ください。
(出典: Marvell Technology Group Ltd Q2 FY2026, SEC EDGAR, Stock Analysis)

5. リスク要因

(1) 事業リスク(顧客集中リスク・期待外れのガイダンス)

マーベル・テクノロジーは以下の事業リスクを抱えています:

  • 顧客集中リスク: Amazon・Google・Microsoftなど大手クラウド企業への依存度が高く、上位5社で売上の50%超を占めます。Amazonでのシェア喪失懸念(Trainiumチップの立ち上げ遅延)が将来収益に影響を及ぼす可能性があります。
  • 期待外れのガイダンス: データセンター収益とガイダンスが市場予想レンジの上限を下回り、株価18%急落(2025年8月)。ASIC事業への期待が高かっただけに、投資家を失望させました。
  • 企業向けオンプレミス事業の売上減速: クラウドシフトにより、企業向けオンプレミス事業の売上減速見通しがあります。

(2) 市場環境リスク(半導体サイクル・地政学リスク)

  • 半導体サイクル(シリコンサイクル): 需要増→設備投資増→供給過剰→価格下落のサイクルにより、業績が変動しやすい。2023年は在庫調整で業績低迷しました。
  • 地政学的緊張(米中対立): 半導体輸出規制や中国市場へのアクセス制限が事業に影響を及ぼす可能性があります。
  • 為替レート変動: 1ドル=140-150円のレンジで推移(2025年10月時点)しており、円高時には為替差損が発生します。

(3) 規制・競争リスク(NVIDIA・クラウド企業の自社チップ開発)

  • NVIDIA、AMD、Broadcomとの激しい競争: AI・データセンター市場での競争が激化しており、シェア獲得競争が収益性に圧力をかける可能性があります。
  • クラウドプロバイダーの自社チップ開発: Amazon(Graviton、Trainium)、Google(TPU)、Microsoft(Maia)などが自社チップを開発しており、マーベルへの発注減少リスクがあります。
  • 規制リスク: 半導体輸出規制や環境規制が事業に影響を及ぼす可能性があります。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み

マーベル・テクノロジーの強みは以下の3点です:

  1. カスタムASICとDPUでの差別化: Amazon・Google・Microsoftなど大手クラウド企業向けカスタムチップで高シェア。NvidiaのGPUと組み合わせて使われるDPUで、AI・クラウドインフラの成長を享受。
  2. データセンター事業の急成長: データセンター事業が売上の74%を占め69%成長。AI関連収益が総収益の50%超に達する見込みで、2026年度のAI関連売上は25億ドル超の予測。
  3. 高い収益性: 非GAAP営業利益率34.8%で前年比870bp改善。50億ドルの自社株買いプログラムで株主還元を強化。

(2) リスク要因(再掲)

  • 顧客集中リスク: Amazon・Google・Microsoft依存(上位5社で売上の50%超)、Amazonでのシェア喪失懸念。
  • 半導体サイクルの影響: シリコンサイクルによる業績変動リスク。2023年は在庫調整で業績低迷。

(3) 向いている投資家

マーベル・テクノロジーは以下のような投資家に向いています:

  • AI・データセンター・5G向け半導体の成長性に注目する中級投資家: データインフラ半導体市場の成長に期待できる方。
  • 長期投資(5-10年)を検討している方: 配当は控えめ(0.3%)ですが、株価上昇による資産形成を狙える方。
  • 半導体サイクルの変動に耐えられる方: シリコンサイクルによる業績変動リスクに耐性がある方。

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新情報はMarvell Technology公式IRページや証券会社の情報をご確認ください。

Q: マーベル・テクノロジーの配当利回りは?

A: 約0.3%です(2025年10月時点)。配当性向は10%未満で、成長投資を優先しています。配当収入を期待する投資家には向きませんが、成長による株価上昇を狙う投資家には魅力的です。

Q: マーベル・テクノロジーの主な競合は?

A: NVIDIA、AMD、Broadcomなどです。ただしカスタムASICとDPU(データ処理ユニット)で差別化しており、NvidiaのGPUと組み合わせて使われる立ち位置です。GPUがAI演算を担い、DPUがデータ転送・ネットワーク処理を担うことで、全体の性能を向上させています。

Q: マーベル・テクノロジーのリスク要因は?

A: 顧客集中リスク(Amazon・Google・Microsoftなど大手クラウド企業依存、上位5社で売上の50%超)、半導体サイクルの影響(シリコンサイクルによる業績変動、2023年は在庫調整で業績低迷)、競合との激しい競争(NVIDIA、AMD、Broadcom、クラウド企業の自社チップ開発)などがあります。詳細は本文の「5. リスク要因」を参照してください。

Q: マーベル・テクノロジーは長期投資に向いている?

A: AI・データセンター・5G向け半導体の成長性に注目する中級投資家に向いています。アナリストは今後数年間に年率23%の利益成長を予測しており、EPS成長率は2025年の1.57ドルから2028年には4.32ドルへ175%上昇見込みです。ただし半導体サイクルの変動に耐えられる方向けです。投資判断はご自身で行ってください。

よくある質問

Q1マーベル・テクノロジーの配当利回りは?

A1約0.3%です(2025年10月時点)。配当性向は10%未満で、成長投資を優先しています。配当収入を期待する投資家には向きませんが、成長による株価上昇を狙う投資家には魅力的です。

Q2マーベル・テクノロジーの主な競合は?

A2NVIDIA、AMD、Broadcomなどです。ただしカスタムASICとDPU(データ処理ユニット)で差別化しており、NvidiaのGPUと組み合わせて使われる立ち位置です。GPUがAI演算を担い、DPUがデータ転送・ネットワーク処理を担うことで、全体の性能を向上させています。

Q3マーベル・テクノロジーのリスク要因は?

A3顧客集中リスク(Amazon・Google・Microsoftなど大手クラウド企業依存、上位5社で売上の50%超)、半導体サイクルの影響(シリコンサイクルによる業績変動、2023年は在庫調整で業績低迷)、競合との激しい競争(NVIDIA、AMD、Broadcom、クラウド企業の自社チップ開発)などがあります。詳細は本文の「5. リスク要因」を参照してください。

Q4マーベル・テクノロジーは長期投資に向いている?

A4AI・データセンター・5G向け半導体の成長性に注目する中級投資家に向いています。アナリストは今後数年間に年率23%の利益成長を予測しており、EPS成長率は2025年の1.57ドルから2028年には4.32ドルへ175%上昇見込みです。ただし半導体サイクルの変動に耐えられる方向けです。投資判断はご自身で行ってください。

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Single Stock編集部

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