0. この記事でわかること
本記事では、ブロック(XYZ)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: 「Bank the Base」戦略でCash App成長率16%、Borrowの年間オリジネーション180億ドル、Bitcoin・暗号資産事業の拡大
- 事業内容と成長戦略: Square(中小企業向け決済)とCash App(個人向け送金)の2本柱、Bitcoin売買機能で若年層に人気
- 競合との差別化: PayPal・Shopify・Stripeとの競争下でも、Cash AppのBTC売買とエコシステム統合で優位性
- 財務・配当の実績: GP成長率10-30%継続、無配の成長株、営業利益率5%前後の低収益性
- リスク要因: 成長率急減速(22%→9%)、法的調査(KYC不備・制裁国取引疑惑)、集団訴訟、Afterpay統合苦戦
(約230字)
1. なぜブロック(XYZ)が注目されているのか
(1) 成長戦略の3つのポイント
ブロックは3つの戦略で成長を加速させています。第一に、「Bank the Base」戦略です。Cash App Card(デビットカード機能)、Buy Now Pay Later(BNPL)、Bitcoin、Cash App Borrowに注力し、Cash AppのGP(グロスプロフィット)成長率16%を達成しました。特にBorrowの年間オリジネーション(貸付額)は180億ドルに達し、前年比でほぼ2倍に成長しています。24%の純マージンを維持しており、収益性も改善傾向にあります。
第二に、エコシステム統合です。Square、Cash App、Afterpay、TIDAL(音楽配信)、Bitkey(ビットコインウォレット)、Proto(ビットコインマイニング)を統合し、ユーザーエンゲージメントと継続率を向上させています。Cash Appユーザーの78%が35歳以下という若年層中心の顧客基盤が、長期的な成長ポテンシャルを示しています。
第三に、Bitcoin・暗号資産戦略です。Bitkey(セルフカストディ型ビットコインウォレット)、Proto(オープンビットコインマイニングシステム、30-60億ドル市場)、Square TerminalのBitcoin決済統合で新市場を開拓しています。Cash App経由でビットコインを売買できる機能は、若年層に支持されており、差別化ポイントとなっています。
(2) 注目テーマ(AI自動化・BNPL・Bitcoin・暗号資産)
投資家の関心はAI自動化に集中しています。Square AIは中小企業がマーケティング、在庫管理、顧客対応をAIで効率化できるツールで、Square Handheld、Square Onlineなどの新製品と連携しています。中小企業オーナーはAIを活用することで、少人数でも大企業並みのサービスを提供できるようになります。
**Buy Now Pay Later(BNPL)**も重要なテーマです。Afterpay買収(2022年、290億ドル)により、若年層に人気の後払い決済サービスを取り込みました。Cash App BorrowとAfterp ayを統合することで、個人向け金融サービスを拡充しています。Borrowの年間オリジネーション180億ドルは、この戦略の成果を示しています。
Bitcoin・暗号資産は最も注目されているテーマです。Cash App経由でビットコインを売買できる機能は、Venmo(PayPal傘下)にはない差別化ポイントです。Bitkeyはセルフカストディ型ウォレットで、ユーザーが秘密鍵を自己管理できるため、取引所のハッキングリスクを回避できます。Protoはオープンソースのビットコインマイニングシステムで、30-60億ドル市場を狙っています。ただし、ビットコイン事業は売上高は大きいですが利益率が1%未満と低く、利益貢献は限定的です。
(3) 投資家の関心・懸念点
アナリスト32社は平均目標株価79.5ドルで「買い」評価を与えています(22買い、4保留、1売り)。2025年通期GP見通し101.7億ドル(前年比14%増)、調整後営業利益20.3億ドル(マージン20%)を掲げ、マージン拡大と成長加速を予測しています。長期予測では株価53.83ドル→176.66ドル(2027年末、113%上昇)も示されています。
しかし懸念点も存在します。Q1 2025の成長率は9%に減速し(前年同期22%)、マクロ経済不確実性を理由に株価が17.84%急落しました(アフターマーケット48.05ドル)。GPV(グロスペイメントボリューム、総決済額)は568億ドルで予想580億ドルを下回りました。成長率を15%→12%に下方修正し、2025-26年のEPS見積もりも引き下げられました。
さらに深刻なのは法的・コンプライアンス問題です。連邦検察の調査(KYC不備、制裁国・テロ組織取引処理疑惑)と集団訴訟(Cash App・Squareの広範なコンプライアンス違反)により、評判損傷と財務不安定化の懸念が浮上しています。Afterpay買収290億ドルなど資本配分ミスとの指摘もあり、投資家の信頼が揺らいでいます。
2. ブロックの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(Square・Cash App・Bitcoin)
ブロックの事業は2つの主力セグメントと周辺事業で構成されています。Square(中小企業向け決済端末・POSシステム、売上の約50%)は、スマートフォンやタブレットに接続できるカードリーダーを提供しています。個人事業主や中小店舗が数千円でクレジットカード決済を導入できるため、2009年の創業以来、数百万店舗に普及しました。Square POSレジ、Square Terminal(一体型決済端末)、Square Online(ECサイト構築)などを展開し、中小企業のデジタル化を支援しています。
Cash App(個人向け送金・投資アプリ、ユーザー5000万人超、売上の約40%)は、友人間での送金、デビットカード機能、株式・ビットコイン投資、後払い決済(Borrow)を提供しています。Venmo(PayPal傘下)と競合していますが、Cash Appはビットコイン売買機能で差別化しています。Cash App Cardはデビットカード機能付きで、ユーザーがCash App残高をATMで引き出したり、店舗で支払ったりできます。
Bitcoin事業(Cash App経由のBTC売買、売上の約10%)は、売上高は大きいですが利益率が1%未満と低いです。ビットコインを原価に近い価格で販売し、取引手数料で収益を得るモデルのため、ビットコイン価格が上昇すると売上高は増えますが利益への寄与は限定的です。ただし、若年層の顧客獲得とエンゲージメント向上には貢献しています。
その他の事業として、TIDAL(音楽配信、2021年買収)、Bitkey(セルフカストディ型ビットコインウォレット)、Proto(オープンビットコインマイニングシステム)があります。これらは売上貢献は小さいですが、エコシステム拡大とブランド強化に寄与しています。
(2) セクター・業種の説明(資本財・専門サービス)
ブロックは資本財セクターの専門サービス業種に分類されます。フィンテック企業として、決済処理・送金・金融サービスを提供しています。一般的な銀行とは異なり、預金を受け入れず、決済処理と送金サービスに特化しているため、銀行規制の一部を回避できます。ただし、連邦検察の調査が示すように、KYC(顧客確認)やAML(マネーロンダリング対策)の規制は適用されます。
専門サービス業種の特性として、テクノロジー依存度の高さがあります。Squareは決済処理速度と手数料の低さで競争しており、システム障害やサイバー攻撃に脆弱です。Cash Appも同様で、ユーザーデータの保護とセキュリティが事業継続の鍵です。法的調査が示すように、コンプライアンス体制の不備は事業リスクとなります。
(3) ビジネスモデルの特徴(中小企業と個人向けフィンテック)
ブロックの最大の特徴は、中小企業と個人をターゲットにしたビジネスモデルです。従来の決済処理会社(Visa、Mastercard、American Express)は大企業向けに高額な導入費用と月額料金を課していました。Squareはこれを破壊し、初期費用ゼロ・取引手数料のみ(2.6% + 10セント程度)で中小企業に提供しました。
「フリーミアム」的な要素もあります。Squareの基本的なカードリーダーは数千円で購入でき、月額料金なしで利用できます。ただし、高度な機能(在庫管理、従業員管理、会計ソフト統合など)は有料プランで提供され、顧客が成長するに従ってアップグレードする仕組みです。
Cash Appも同様に、送金手数料無料(即時送金は有料)でユーザーを獲得し、Cash App Card、Bitcoin売買、Borrowなどの付加サービスで収益化しています。Cash App Cardは発行時に手数料を取らず、加盟店からのインターチェンジフィー(カード決済手数料の一部)で収益を得ます。
無配の成長株であるため、フリーキャッシュフローは全て成長投資に充当しています。Afterpay買収(290億ドル)、TIDAL買収、AI・Bitcoin事業への投資など、積極的なM&Aと研究開発を行っています。ただし、Afterpay統合が当初の期待通りに進んでいない点が課題です。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(PayPal・Shopify・Stripe)
ブロックの競合は事業ごとに異なります。PayPalは個人向け送金アプリ「Venmo」でCash Appと直接競合しています。Venmoはソーシャル機能(友人の支払い履歴を共有)で人気を集めましたが、ビットコイン売買機能ではCash Appに遅れを取っています。PayPal本体も決済処理で競合していますが、主にオンライン決済に特化しています。
ShopifyはEC事業者向けに決済処理とサイト構築を提供しており、Square Onlineと競合しています。Shopify Paymentsは自社プラットフォームに統合されているため、Shopify利用者は追加コストなしで決済を導入できます。一方、Squareは実店舗向けPOSレジに強みがあり、オンライン・オフラインの統合(OMO)で差別化しています。
Stripeはオンライン決済処理の最大手で、開発者向けAPIの使いやすさで評価されています。Shopify、Amazon、Uber、Airbnbなど大手テック企業が採用しており、技術力ではブロックを上回ります。ただしStripeは中小企業向けには力を入れておらず、Squareとは顧客層が異なります。
Apple PayとGoogle Payも間接的な競合です。スマートフォン決済が普及すると、Cash App CardやSquare Terminalの需要が減少する可能性があります。ただし、ブロックはApple Pay・Google Payと統合することで、これらのプラットフォームを補完的に活用しています。
(2) 競合優位性(Cash AppのBTC売買・エコシステム統合)
ブロックの競合優位性は、Cash AppのBTC売買機能にあります。Venmoもビットコイン売買を導入しましたが、Cash Appの方が先行しており、若年層(78%が35歳以下)に浸透しています。Bitkeyの導入により、セルフカストディ型ウォレットを提供し、取引所リスクを回避できる点も差別化されています。
エコシステム統合も重要です。Squareで決済を受け取った事業者がCash Appで給与を従業員に支払い、従業員がCash App CardでBitcoinを購入し、TIDALで音楽を聴くという一連のフローを構築しています。この統合により、ユーザーが他社プラットフォームに移行するコストが上昇します。
中小企業向け特化も優位性です。Stripeは大企業向け、PayPalはオンライン決済向けに強いですが、Squareは実店舗の中小企業に最適化されています。数千円でカードリーダーを導入でき、月額料金なしで利用できる点が、個人事業主や小規模店舗に支持されています。
ただし、収益性の低さ(営業利益率5%前後)は競合と比較して劣ります。PayPalは営業利益率15-20%、Stripeも10%以上とされています。ブロックはAfterpay統合コストやBitcoin事業の低利益率が重石となっており、収益性改善が課題です。
(3) 市場でのポジショニング(中小企業決済・個人送金)
ブロックは中小企業決済と個人送金の2つの市場でリーダーポジションを確立しています。Squareのカードリーダーは米国で数百万店舗に導入されており、中小企業決済市場では20-30%のシェアを持つとされています。ただし、Shopify Payments、Stripe、Cloverなどの競合もシェアを拡大しており、競争は激化しています。
個人送金市場では、Cash AppがVenmoと二大勢力を形成しています。米国の送金アプリ市場はVenmoが先行していましたが、Cash AppがBitcoin機能で追い上げ、ユーザー数5000万人超を達成しました。ただし、Zelleや銀行アプリの無料送金サービスも普及しており、送金手数料無料化の圧力が強まっています。
Bitcoin・暗号資産市場では、Coinbase、Binance、Krakenなどの取引所が主要プレイヤーです。Cash Appはこれらと直接競合していませんが、「決済アプリに組み込まれたBitcoin売買機能」として独自のポジションを築いています。Bitkeyとプロトにより、ウォレットとマイニング市場にも進出していますが、まだ初期段階です。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(GP成長率10-30%継続)
ブロックの売上高(GP、グロスプロフィット)は継続的な成長を見せています。以下は過去3年間の財務推移です(2025年10月時点の公開情報に基づく):
| 年度 | GP(億ドル) | GP成長率 | 調整後営業利益(億ドル) | 営業利益率 | EPS |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022 | 約70億 | 約30% | 約10億 | 約14% | 未公開 |
| 2023 | 約80億 | 約14% | 約15億 | 約19% | 未公開 |
| 2024 | 約89億 | 約11% | 約18億 | 約20% | 未公開 |
| 2025見通し | 約101.7億 | 約14% | 約20.3億 | 約20% | 未公開 |
(出典: Block Investor Relations, Yahoo Finance - Block Q2 2025 Earnings Highlights)
Q2 2025ではEPS 0.62ドル(予想0.49ドルを26.53%上回る)、GP 25億ドル(前年比14%増)、調整後営業利益5.5億ドル(38%増、マージン22%)を記録しました。Q3 2025見通しは、GP 26億ドル(16%成長)、調整後営業利益4.6億ドル(18%マージン)です。
ただし、成長率は減速傾向にあります。2022年の30%成長から2024年には11%に低下し、Q1 2025では9%まで減速しました。マクロ経済不確実性を理由に成長率を15%→12%に下方修正し、2025-26年のEPS見積もりも引き下げられました。GPV(総決済額)は568億ドルで予想580億ドルを下回り、投資家を失望させました。
(2) 配当履歴(無配の成長株)
ブロックは無配の成長株です(2025年10月時点)。フリーキャッシュフローは全て成長投資(AI、Bitcoin、M&A)に充当しており、株主還元は株価上昇と自社株買いを通じて行う方針です。2024年には自社株買いプログラムを開始し、107億ドルの流動性を確保していますが、配当支払いの予定はありません。
配当を期待する投資家には向きませんが、成長投資を重視する投資家には魅力的です。Afterpay買収(290億ドル)、TIDAL買収、AI・Bitcoin事業への年間数億ドルの投資など、積極的な成長戦略を展開しています。ただし、Afterpay統合が当初の期待通りに進んでおらず、資本配分ミスとの指摘もあります。
(3) 財務健全性(営業利益率5%前後の低収益性)
ブロックの財務健全性には課題があります。営業利益率は5%前後と、決済業界平均10-15%を下回っています。Bitcoin事業の利益率が1%未満であることや、Afterpay統合コストが重石となっています。調整後営業利益率は20%前後まで改善していますが、これは特別項目を除外した数値であり、実際の営業利益率とは乖離があります。
107億ドルの流動性(現金・短期投資)を確保しており、財務基盤は堅固です。Afterpay買収後も負債比率は適切な水準にあり、フリーキャッシュフローも黒字化しています。ただし、法的調査と集団訴訟により、和解金や罰金が発生する可能性があります。
「Rule of 40」(成長率% + 利益率% ≥ 40%を目指すSaaS企業の財務目標)は35.5%で、2024年の36.5%から低下しています。成長率が減速し、利益率改善も限定的なため、投資家の期待値を下回っています。アナリストはマージン拡大と成長加速を予測していますが(Q1 11%→Q4 19%へ)、実現には不確実性が伴います。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はBlock公式IRページをご確認ください。 (出典: Block Investor Relations, SEC EDGAR 10-K)
5. リスク要因
(1) 事業リスク(成長率急減速・法的調査・訴訟)
最大の事業リスクは成長率の急減速です。Q1 2025の成長率は9%に減速し(前年同期22%)、マクロ経済不確実性を理由に株価が17.84%急落しました(アフターマーケット48.05ドル)。GPVは568億ドルで予想580億ドルを下回り、成長率を15%→12%に下方修正しました。2025-26年のEPS見積もりも引き下げられ、成長期待が低下しています。
法的調査・訴訟も深刻なリスクです。連邦検察の調査(KYC不備、制裁国・テロ組織取引処理疑惑)により、ブロックのコンプライアンス体制に疑問が投げかけられています。集団訴訟(Cash App・Squareの広範なコンプライアンス違反)も提起されており、和解金や罰金が発生すれば財務に影響します。評判損傷により、顧客離れや新規顧客獲得の困難化も懸念されます。
Afterpay統合苦戦も事業リスクです。290億ドルで買収したAfterp ayの統合が当初の期待通りに進んでおらず、資本配分ミスとの指摘があります。BNPLは若年層に人気ですが、競合(Klarna、Affirm)も多く、差別化が困難です。統合コストが想定以上にかかり、収益性を圧迫しています。
(2) 市場環境リスク(マクロ経済不確実性・Bitcoin価格変動)
マクロ経済不確実性は成長率に直結します。Q1 2025の成長率減速はマクロ経済の影響とされており、消費者支出の減少や中小企業の決済処理需要の低下が懸念されています。金利上昇により、Cash App BorrowやAfterp ayの貸倒率が上昇すれば、収益性がさらに悪化します。
Bitcoin価格変動も重要なリスクです。Bitcoin事業は売上高の約10%を占めますが、利益率が1%未満のため、ビットコイン価格が下落すると売上高は減少し、利益への影響は限定的です。ただし、Cash Appユーザーのエンゲージメント低下により、他のサービス(送金、Borrow、Cash App Card)の利用も減る可能性があります。
為替リスクも日本人投資家には重要です。ブロックは米国企業で売上の大半は米国市場から得ていますが、円高進行時は円換算の投資価値が減少します。為替ヘッジを行わない場合、為替変動による評価損益が発生します。
(3) 規制・競争リスク(コンプライアンス問題・Afterpay統合苦戦)
規制リスクは法的調査が示すように、常に存在します。KYC(顧客確認)とAML(マネーロンダリング対策)の規制強化により、コンプライアンスコストが上昇します。制裁国やテロ組織との取引が発覚すれば、罰金や事業停止命令が出る可能性もあります。Bitcoin事業も規制の対象で、SEC(証券取引委員会)やFTC(連邦取引委員会)の監視が強まっています。
競争激化も無視できません。PayPal、Shopify、Stripe、Apple Pay、Google Payはいずれも巨大企業で、資金力と技術力で優位です。中小企業決済市場では価格競争が激化しており、手数料の引き下げ圧力が強まっています。Cash Appも送金手数料無料化の圧力にさらされており、収益源の多様化が必要です。
収益性の低さ(営業利益率5%前後)は長期的なリスクです。競合が収益性を武器に価格競争を仕掛けた場合、ブロックは対抗できません。調整後営業利益率20%は特別項目を除外した数値で、実際の営業利益率とは乖離があります。マージン拡大が実現しなければ、投資家の期待を裏切ることになります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
ブロックの強みは3点に集約されます。第一に、Cash AppのBTC売買機能とエコシステム統合です。Venmo(PayPal傘下)にはないビットコイン売買機能で若年層(78%が35歳以下)を獲得し、Cash App Card、Borrow、TIDALを統合してユーザーエンゲージメントを高めています。Borrowの年間オリジネーション180億ドル(前年比2倍)は、この戦略の成果を示しています。
第二に、中小企業向け特化です。Squareは数千円でカードリーダーを導入でき、月額料金なしで利用できるため、個人事業主や小規模店舗に支持されています。Square AI、Square Handheld、Square Onlineなどの新製品により、中小企業のデジタル化を包括的に支援しています。
第三に、Bitcoin・暗号資産戦略です。Bitkey(セルフカストディ型ウォレット)、Proto(ビットコインマイニング、30-60億ドル市場)、Square TerminalのBitcoin決済統合で新市場を開拓しています。107億ドルの流動性と自社株買いプログラムにより、財務基盤も堅固です。
(2) リスク要因(再掲)
リスク要因は2点です。第一に、成長率急減速と法的調査・訴訟です。Q1 2025の成長率は9%に減速し(前年同期22%)、株価が17.84%急落しました。連邦検察の調査(KYC不備、制裁国取引疑惑)と集団訴訟により、評判損傷と財務不安定化の懸念があります。Afterpay統合苦戦(290億ドルの資本配分ミス)も課題です。
第二に、低収益性とマクロ経済不確実性です。営業利益率5%前後は決済業界平均10-15%を下回り、Bitcoin事業の利益率1%未満が重石となっています。マクロ経済不確実性により消費者支出が減少すれば、Cash AppとSquareの両方に影響します。Bitcoin価格変動もリスクです。
(3) 向いている投資家
ブロックは以下のタイプの投資家に向いています:
フィンテック・決済セクターの成長性に注目する中級投資家: キャッシュレス決済の普及やビットコイン関連ビジネスに魅力を感じる方。年収700-1500万円、投資可能資産500-3000万円程度の層。
配当よりもキャピタルゲインを重視する投資家: 無配の成長株であるため、配当収入を期待せず、株価上昇による利益を狙う方。NISA枠を使った長期投資に適しています(NISA対象かどうかは証券会社で事前確認が必要)。
法的リスクや収益性の低さに耐えられる投資家: 連邦検察の調査や集団訴訟、営業利益率5%前後という低収益性を理解し、長期的な成長を信じて保有できる方。ポートフォリオの一部(10-20%程度)として組み入れ、リスク分散することが推奨されます。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の売買推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新の財務データはBlock公式IRページおよびSEC EDGARで確認してください。税制・為替レートは変動するため、国税庁・金融庁の最新情報をご確認ください。
Q: ブロックの配当利回りは?
A: ブロックは無配です(2025年10月時点)。フリーキャッシュフローは全て成長投資(AI、Bitcoin、M&A)に充当しており、株主還元は株価上昇と自社株買いを通じて行う方針です。2024年には自社株買いプログラムを開始し、107億ドルの流動性を確保していますが、配当支払いの予定はありません。配当収入を期待する投資家には向きませんが、成長投資を重視する投資家には魅力的な選択肢と言えます。
Q: ブロックの主な競合は?
A: 事業ごとに異なります。個人向け送金ではPayPal(Venmo)、EC事業者向けではShopify(Shopify Payments)、オンライン決済処理ではStripe、スマートフォン決済ではApple Pay・Google Payが主要競合です。ただし、ブロックはCash AppのBTC売買機能で差別化しており、若年層(78%が35歳以下)に支持されています。Bitkeyの導入により、セルフカストディ型ウォレットを提供し、取引所リスクを回避できる点も差別化されています。中小企業向けでは、Squareが実店舗に最適化されており、数千円でカードリーダーを導入できる点が優位です。
Q: ブロックのリスク要因は?
A: 主なリスク要因は3つあります。①成長率急減速(Q1 2025で9%に減速、前年同期22%から減速し、株価17.84%急落)、②法的調査・訴訟(連邦検察の調査でKYC不備・制裁国取引疑惑、集団訴訟でコンプライアンス違反)、③低収益性(営業利益率5%前後は決済業界平均10-15%を下回る、Bitcoin事業の利益率1%未満)です。また、Afterpay統合苦戦(290億ドルの資本配分ミス)、マクロ経済不確実性、Bitcoin価格変動も投資家の懸念材料です。詳細は本文の「5. リスク要因」を参照してください。
Q: ブロックは長期投資に向いている?
A: フィンテック・決済セクターの成長性に注目する中級投資家に向いています。Cash AppのBTC売買機能とエコシステム統合、中小企業向け特化、Bitcoin・暗号資産戦略が成長ドライバーです。ただし、法的リスク(連邦検察の調査・集団訴訟)や収益性の低さ(営業利益率5%前後)に耐えられる方向けです。無配の成長株であるため、配当収入ではなく株価上昇(キャピタルゲイン)を狙う投資戦略が前提となります。ポートフォリオの一部(10-20%程度)として組み入れ、リスク分散することが推奨されます。投資判断はご自身で行ってください。
