米国株暴落は予測できるのか?歴史から学ぶ対処法
「米国株の暴落が近い」「次の大暴落に備えるべき」といった予想を目にすると、不安になる投資家は少なくありません。2025年4月にはトランプ関税ショックでS&P500が急落し、約290兆円の時価総額が消失しました。しかし、6月27日には完全に回復しています。
暴落のタイミングを正確に予測することは不可能ですが、過去の暴落事例を学び、適切な対処法を知っておくことで、リスクを軽減できます。この記事では、米国株暴落の歴史、2025年の最新状況、専門家の見解、そして暴落に備えるリスク管理術を解説します。
この記事のポイント:
- 2025年4月の暴落は6月に完全回復(過去の暴落も必ず回復している)
- 専門家は10-20%の調整を予測するが、タイミングは予測不可能
- 高バリュエーション(PER 23倍超)とAI投資が警戒すべきリスク要因
- 暴落時は狼狽売りを避け、長期投資を継続することが重要
- 分散投資とドルコスト平均法でリスクを軽減できる
1. 米国株暴落の歴史と定義
「暴落」という言葉は頻繁に使われますが、明確な定義を理解しておくことが重要です。
(1) 暴落(Market Crash)と調整(Market Correction)の違い
金融市場では、以下のように区別されます。
- 調整(Market Correction): 高値から10%以上の下落
- 暴落(Market Crash): 高値から20%以上の急激な下落
2025年4月のトランプ関税ショックは一時的に20%に近い下落となり、「暴落」に分類される規模でしたが、短期間で回復しました。
(2) 過去150年の主要な暴落事例
米国株式市場は過去150年間で何度も暴落を経験してきました。代表的な事例として、ブラックマンデー(1987年)、ITバブル崩壊(2000年)、リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)が挙げられます。
これらの暴落に共通するのは、必ず回復してきたという事実です。短期的には大きな損失を被ることもありますが、長期的には株式市場は成長を続けてきました。
2. 2025年のトランプ関税ショックと回復
2025年には既に一度の暴落が発生し、回復しています。
(1) 2025年4月2日の急落(時価総額約290兆円消失)
2025年4月2日、トランプ政権が発表した新たな関税政策により、米国株式市場は急落しました。S&P500は調整局面入りし、時価総額約2兆ドル(約290兆円)が消失しました。投資家の間では景気後退への懸念が高まり、一時的にパニック売りが広がりました。
(出典: Bloomberg「米国株急落、S&P500種は調整局面入り-関税で景気後退懸念強まる」2025年4月3日)
(2) 6月27日の完全回復
しかし、この暴落は短期間で終息しました。2025年6月27日までに、S&P500は4月の暴落前の水準を完全に回復しています。歴史的に見ても、政策要因による暴落は比較的早く回復する傾向があります。
(出典: Wikipedia「2025 stock market crash」)
この事例は、暴落時に慌てて売却する「狼狽売り」を避けることの重要性を改めて示しました。
3. 専門家の暴落予想と現在のリスク要因
2025年11月時点で、大手金融機関のトップは慎重な見方を示しています。
(1) ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーCEOの見解
ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーのCEOは、2025年11月時点で「10-20%の調整が起こる可能性がある」と予測しています。ただし、これは「いつ起こるか」を明言するものではなく、警戒すべきリスクがあるという指摘にとどまります。
(出典: EBC「Stock Market Crash 2025 Predictions: What Experts Are Saying」2025年11月)
(2) 高バリュエーション(PER 23倍超)
2025年11月時点で、S&P500のPER(株価収益率)は23倍を超えています。これは過去25年間で1回しかない割高水準です。歴史的に見て、高バリュエーションは調整のリスク要因とされています。
(出典: U.S. News「Will the Stock Market Crash in 2025? 4 Risk Factors」)
(3) AIバブル崩壊の可能性
AI関連企業への投資ブームが続いており、「AIバブル」崩壊の懸念が一部で語られています。しかし、AI技術の実用化が進んでいることを考えると、ITバブル崩壊(2000年)とは状況が異なるという見方もあります。
(4) VIX指数とバフェット指標の監視
リスクを監視する指標として、以下が有用です。
- VIX指数(恐怖指数): 市場のボラティリティ(変動性)を示す指標。30以上で警戒レベル
- バフェット指標: 時価総額÷GDPで算出。100%を超えると割高とされる
これらの指標を定期的に確認することで、リスクの高まりを察知できます。
4. 過去の暴落から学ぶ教訓
過去の暴落事例を振り返ることで、今後の対処法のヒントが得られます。
(1) ブラックマンデー(1987年)
1987年10月19日、ダウ平均株価は1日で22.6%下落しました。しかし、2年以内に回復し、その後も長期的な上昇トレンドを維持しました。
(2) ITバブル崩壊(2000年)
2000年代初頭、インターネット関連企業への過剰な期待が崩壊し、NASDAQ指数は約78%下落しました。回復には数年を要しましたが、その後のテクノロジー企業の成長により、市場は大きく拡大しました。
(3) リーマンショック(2008年)
2008年の金融危機では、S&P500は約57%下落しました。世界経済が深刻な影響を受けましたが、米国株式市場は2013年までに回復し、その後も史上最高値を更新し続けています。
(4) コロナショック(2020年)
2020年3月、新型コロナウイルスのパンデミックにより、S&P500は約34%下落しました。しかし、わずか5か月で暴落前の水準を回復し、2021年には大幅な上昇を記録しました。
(5) 暴落は必ず回復してきた歴史
これらの事例から分かるのは、暴落は必ず回復してきたという事実です。回復までの期間は数か月から数年とばらつきがありますが、長期投資を継続した投資家は最終的に利益を得ています。
(出典: SBBIT「現実味増す『米国株バブル崩壊』…過去150年の『大暴落』を分析して導き出した備え方」)
5. 暴落時の対処法とリスク管理
暴落時にどう行動するかが、長期的な投資成果を左右します。
(1) 狼狽売りを避ける
暴落時に最も避けるべきは「狼狽売り」(パニックになって売却すること)です。2025年4月の暴落時に売却した投資家は、6月の回復時に利益を得る機会を逃しました。感情的な判断ではなく、冷静に状況を見極めることが重要です。
(2) 長期投資を継続する
歴史的に見て、米国株式市場は長期的には成長を続けてきました。短期的な下落に動揺せず、長期的な視点で投資を継続することが成功の鍵です。
(3) ドルコスト平均法で平均取得単価を下げる
ドルコスト平均法とは、定期的に一定額を投資する手法です。価格が下がった時には多くの株を購入できるため、平均取得単価を下げる効果があります。暴落時も機械的に買い続けることで、回復時に大きなリターンを得られる可能性が高まります。
(出典: moomoo「米国株価が下がるとどうすればいい?米国株下落時の対策と今後の見通し」)
(4) 分散投資とリバランス
株式だけでなく、債券、金、不動産など複数の資産クラスに分散投資することで、株式市場全体の暴落時に損失を抑えられます。また、定期的にリバランス(資産配分の調整)を行うことで、リスクをコントロールできます。
(5) 現金比率の確保
ポートフォリオの一部を現金で保有しておくことで、暴落時に買い増しのチャンスを活かせます。また、生活資金を確保しておくことで、暴落時に慌てて売却する必要がなくなります。
6. まとめ:長期投資の重要性
米国株の暴落は歴史的に繰り返されてきましたが、必ず回復してきたという事実も同時に存在します。暴落のタイミングを正確に予測することは不可能ですが、適切な対処法を知っておくことで、リスクを軽減できます。
重要なポイント:
- 暴落予想に過度に反応せず、長期投資を継続する
- 狼狽売りを避け、暴落時は買い増しのチャンスと捉える
- 分散投資とドルコスト平均法でリスクを軽減する
- VIX指数やバフェット指標を監視し、リスクに備える
次のアクション:
- 自分のリスク許容度を再確認する
- ポートフォリオの分散状況をチェックする
- 長期的な投資計画を見直す
暴落は不安を伴いますが、冷静に対処することで、長期的な資産形成を実現できます。
※本記事は2025年11月時点の情報に基づいています。投資判断は自己責任で行ってください。
