0. この記事でわかること
本記事では、マイクロストラテジー(MSTR)について以下の情報を提供します:
- なぜ注目されているのか: BIツールベンダーから「ビットコイン財務企業」に事業転換した異色の銘柄として、ビットコイン価格上昇の恩恵を受ける「実質的なビットコインETF」として機能
- 事業内容と成長戦略: 世界最大の企業ビットコイン保有量(約63万BTC、2025年Q2時点)を持ち、「21/21プラン」で今後3年間に420億ドルを調達してBTC購入を継続
- 競合との差別化: 株価がビットコイン価格の2-3倍のボラティリティで変動する「レバレッジをかけたビットコイン関連株」として差別化
- 財務・配当の実績: 2025年Q2でEPS 32.60ドル(予想-0.10ドルを大幅上回る)、営業利益140億ドル。無配の超高リスク・高リターン株
- リスク要因: ビットコイン価格暴落リスク、株価プレミアムの急激な縮小リスク(BTC保有額の3倍評価)、巨額債務による債務超過リスク、証券詐欺訴訟
この記事を通じて、マイクロストラテジーの成長性と極めて高い投資リスクを理解し、投資判断の材料としてください。
1. なぜマイクロストラテジー(MSTR)が注目されているのか
マイクロストラテジー(MicroStrategy Incorporated)は、BIツールベンダーから「ビットコイン保有企業」に事業転換した異色の銘柄です。2020年以降、CEOマイケル・セイラー主導で40億ドル超のビットコインを購入し、企業としては世界最大のBTC保有量(約63万BTC、2025年Q2時点)を誇ります。株価はビットコイン価格に連動し、レバレッジをかけた「ビットコイン関連株」として投資家の注目を集めています。
(1) 成長戦略の3つのポイント
マイクロストラテジーは以下の3つの成長戦略を推進しています(2025年Q2決算より):
ビットコイン財務戦略の大規模展開
2027年までに420億ドル(株式210億ドル+債券210億ドル)を調達する「21/21プラン」を実施中です。2025年のBTC利益目標を100億ドルから150億ドルに引き上げ(BTC価格15万ドル想定で営業利益340億ドル、純利益240億ドル、EPS 80ドル)、ビットコイン買い増しを継続しています。210億ドルの普通株式ATM(市場価格での株式売出し)を実施し、30.1万BTCを追加取得しながらMSTR株価50%上昇を達成しました。2025年2月に「Strategy」にリブランディング
ビットコインを象徴する「B」ロゴ、オレンジのコーポレートカラーを採用し、世界最大のビットコイン財務企業としての地位を明確化しました。社名変更により、ビットコイン投資ビークルとしてのアイデンティティを確立しています。AI+BIソフトウェア事業の強化
MicroStrategy ONEの継続的な機能拡張、AWSマーケットプレイスへの統合により、サブスクリプション収益が前年比48%増となりました。ただし本業のBIソフトウェア売上は5億ドル前後で横ばいであり、企業価値の大半をビットコインが占める状況です。
(2) 注目テーマ(ビットコイン財務戦略・AI搭載BI・デジタル資産企業)
投資家が注目するテーマとして、以下の3つが挙げられます:
- ビットコイン財務戦略: 「インフレヘッジ」としてビットコインを企業資産の主要部分に組み入れる戦略。2020年8月に2.5億ドルのビットコイン投資を開始し、現在は62.8万BTC(424.3億ドル相当)を保有しています。
- AI搭載ビジネスインテリジェンス: MicroStrategy ONEでAI機能を強化し、エンタープライズ分析ソフトウェア事業の成長を目指しています。
- デジタル資産企業トランスフォーメーション: 従来のBIソフトウェア企業からビットコイン財務企業への転換により、ビットコイン価格上昇の恩恵を最大限に享受する構造を確立しました。
(3) 投資家の関心・懸念点
関心点:
- アナリストコンセンサスは「強気買い」で、平均目標株価540.32ドル(最高705ドル、最低175ドル、2025年10月時点)。
- 2025年Q2決算ではEPS 32.60ドルを記録(予想-0.10ドルを大幅上回る)し、営業利益140億ドル、純利益100億ドルを達成。
- 長期予測では2030年に831.46~1,309.55ドル(ROI 325%超)で、ビットコイン価格上昇に連動した株価上昇が期待されています。
- ビットコインの公正価値会計基準(FASB)採用により留保利益が約127億ドル増加し、財務健全性が改善しました。
懸念点:
- 株価がビットコイン保有額から大きく乖離: 時価総額がBTC保有額の約3倍のプレミアム。ステノ・リサーチは「2021年強気相場でも200%未満だったのに対し現在約300%で、プレミアムが持続不可能」と指摘。
- シトロン・リサーチが空売りポジション発表: 「BTCのファンダメンタルズから完全に乖離」として株価一時10%急落(2024年11月)。
- S&P500指数への採用見送り: 2024年9月のリバランスで候補26社中トップの流動性にも関わらず採用されず、失望材料となりました。
- 巨額の未実現損失と法的リスク: 2025年Q1に59.1億ドルの未実現損失を計上、証券詐欺に関する複数の集団訴訟が進行中です。
2. マイクロストラテジーの事業内容・成長戦略
(1) 主力事業(ビットコイン保有・BIソフトウェア)
マイクロストラテジーは2つの企業戦略で構成されています:
- ビットコインの取得・保有: 世界最大のビットコイン財務企業として、62.8万BTC(424.3億ドル相当、2025年Q2時点)を保有。転換社債発行や新株発行で資金調達し、ビットコインを買い増し継続(平均取得単価3万ドル前後)。企業価値の大半をビットコインが占め、実質的にビットコイン投資ビークル化しています。
- エンタープライズ分析ソフトウェア事業: MicroStrategy ONE(AI+BIプラットフォーム)を提供。売上5億ドル前後で横ばいですが、サブスクリプション収益が前年比48%増で成長の兆しを見せています。
(2) セクター・業種の説明(情報技術・ソフトウェア)
マイクロストラテジーはInformation Technology(情報技術)セクターのSoftware(ソフトウェア)業種に分類されます。ただし、実質的にはビットコイン保有企業として機能しており、ソフトウェア事業は停滞しています。
ビットコイン価格が企業価値の大半を決定する構造であり、ソフトウェア業種の企業というよりも「ビットコイン関連株」として市場で評価されています。
(3) ビジネスモデルの特徴(実質的なビットコイン投資ビークル)
マイクロストラテジーの最大の特徴は、実質的なビットコイン投資ビークルとしての機能です:
- レバレッジ効果: 株価はビットコイン価格の2-3倍のボラティリティで変動します。ビットコインを直接保有するよりもハイリスク・ハイリターンの投資が可能。
- 資本調達によるBTC買い増し: 転換社債発行や新株発行(ATM)で資金調達し、ビットコインを買い増し。420億ドルの資本計画のうち200億ドルを完了し、当初予定より大幅に前倒しで進行中です。
- 無配当: フリーキャッシュフローは全てビットコイン購入に充当。配当を期待する投資家には向きません。
- BTC Yield(BTC利回り): ビットコイン保有量の増加率を示す指標で、2025年目標を100億ドルから150億ドルに引き上げました。
2020年8月にCEOマイケル・セイラーが「インフレヘッジ」としてビットコイン購入を発表して以降、約4年間で総額99億ドルを投じ、2024年9月時点で25.2万BTCを保有(2025年Q2では62.8万BTC)。ビットコイン価格上昇により企業価値が急拡大しています。
3. 競合との差別化
(1) 主要競合企業(ビットコインETF・他のBTC保有企業)
マイクロストラテジーの主要競合は以下です:
- ビットコインETF(IBIT等): 直接ビットコインに投資できるETF。手数料が低く、ビットコイン価格に連動する点で競合。
- 他のBTC保有企業(Tesla等): Teslaも一時期ビットコインを保有していましたが、売却により保有量は減少。マイクロストラテジーが企業としては世界最大。
- 仮想通貨取引所: Coinbase等の仮想通貨取引所も間接的にビットコイン関連株として競合。
(2) 競合優位性(世界最大の企業BTC保有量・レバレッジ効果)
マイクロストラテジーの競争優位性は以下の3点です:
- 世界最大の企業BTC保有量: 62.8万BTC(424.3億ドル相当)で、企業としては世界最大。ビットコイン価格上昇の恩恵を最大限に享受。
- レバレッジ効果: 株価はビットコイン価格の2-3倍のボラティリティで変動し、ビットコインETFよりもハイリスク・ハイリターン。ビットコイン価格上昇時には株価も大幅上昇。
- NISA成長投資枠で保有可能: ビットコインETFは日本の証券会社で購入できない場合が多いですが、MSTRは米国株として保有可能で、NISA成長投資枠で非課税投資ができます。
(3) 市場でのポジショニング(ビットコイン関連株の代表銘柄)
マイクロストラテジーは、ビットコイン関連株の代表銘柄として市場でポジショニングされています。ビットコインを直接保有することに抵抗がある投資家や、NISA枠を使ってビットコイン関連投資をしたい投資家にとって、間接的にビットコインに投資できる選択肢として注目されています。
過去1年で株価685%上昇(2024年時点)し、ビットコイン価格上昇に連動した株価パフォーマンスを示しています。ただし、株価がBTC保有額の約3倍のプレミアムで取引されており、過大評価との指摘もあります。
4. 財務・配当の実績
(1) 売上高・利益の推移(BTC評価益で大幅変動)
マイクロストラテジーの財務は、ビットコイン評価益により大幅に変動します。以下は最新決算(2025年Q2)の実績です:
| 項目 | 2025年Q2 | 備考 |
|---|---|---|
| 完全希薄化後EPS | 32.60ドル | 予想-0.10ドルを大幅上回る |
| GAAP営業利益 | 140億ドル | ビットコイン評価益を含む |
| 純利益 | 100億ドル | ビットコイン評価益を含む |
| 年初来営業利益 | 81億ドル | - |
| 年初来純利益 | 57億ドル | - |
| 年初来EPS | 19.43ドル | - |
| ビットコイン保有量 | 628,791 BTC | 世界最大の企業保有者 |
(出典: Strategy Q2 2025 Financial Results, Yahoo Finance)
財務ハイライト:
- ビットコインの公正価値会計基準(FASB)採用により、留保利益が約127億ドル増加。
- 2025年のBTC利益目標を100億ドルから150億ドルに引き上げ(BTC価格15万ドル想定で営業利益340億ドル、純利益240億ドル、EPS 80ドル)。
- 本業のBIソフトウェア売上は5億ドル前後で横ばい。サブスクリプション収益が前年比48%増。
(2) 配当履歴(無配の超高リスク株)
マイクロストラテジーは無配です(2025年10月時点)。フリーキャッシュフローは全てビットコイン購入に充当しています。配当を期待する投資家には向きませんが、ビットコイン価格上昇による株価上昇を狙う投資家には魅力的です。
(3) 財務健全性(巨額負債・BTC保有依存)
- 巨額の負債: 転換社債発行により巨額の負債を抱えており、運営の柔軟性と追加資本調達能力を制限しています。
- ビットコイン保有依存: 企業価値の大半をビットコインが占め、ビットコイン価格が平均取得単価(3万ドル前後)を下回ると含み損計上、債務超過リスクがあります。
- 破綻リスク: CryptoQuantのCEOは「BTC価格が16,500ドルまで下落しない限り破綻は非現実的」と分析していますが、理論的には可能性はゼロではありません。
※2025年10月時点のデータです。最新情報はStrategy公式IRページをご確認ください。
(出典: MicroStrategy Incorporated Q2 2025, TipRanks, Seeking Alpha)
5. リスク要因
(1) 事業リスク(株価プレミアムの過大評価・本業停滞)
マイクロストラテジーは以下の事業リスクを抱えています:
- 株価プレミアムの過大評価: 時価総額がBTC保有額の約3倍のプレミアムで取引されており、ステノ・リサーチは「2021年強気相場でも200%未満だったのに対し現在約300%で、プレミアムが持続不可能」と指摘。プレミアムが1倍に収束すれば株価67%下落のリスクがあります。
- 本業のソフトウェア事業停滞: BIソフトウェア売上は5億ドル前後で横ばい。企業価値の大半をビットコインが占め、ソフトウェア事業の成長性は限定的。
- S&P500指数への採用見送り: 2024年9月のリバランスで候補26社中トップの流動性にも関わらず採用されず、失望材料となりました。
(2) 市場環境リスク(ビットコイン価格暴落・債務超過)
- ビットコイン価格暴落リスク: ビットコイン価格が平均取得単価(3万ドル前後)を大幅に下回ると、巨額の含み損計上により債務超過リスクがあります。破綻水準はBTC価格16,500ドル(現在価格から90%超の下落が必要)ですが、理論的には可能性はゼロではありません。
- 株価のボラティリティ: 株価はビットコイン価格の2-3倍のボラティリティで変動し、短期的な価格変動リスクが極めて高い。
- 為替レート変動: 1ドル=140-150円のレンジで推移(2025年10月時点)しており、円高時には為替差損が発生します。
(3) 規制・競争リスク(証券詐欺訴訟・空売り圧力)
- 証券詐欺に関する調査と集団訴訟: 2025年Q1に59.1億ドルの未実現損失を計上した件に関し、証券詐欺の調査と複数の集団訴訟(期限2025年7月中旬)が進行中です。
- 空売り圧力: シトロン・リサーチが空売りポジション発表「BTCのファンダメンタルズから完全に乖離」として株価一時10%急落(2024年11月)。
- ビットコインETFとの競争: ビットコインETF(IBIT等)の登場により、直接ビットコインに投資できる選択肢が増え、MSTRの優位性が低下する可能性があります。
6. まとめ:投資判断のポイント
(1) この銘柄の強み
マイクロストラテジーの強みは以下の3点です:
- 世界最大の企業BTC保有量: 62.8万BTC(424.3億ドル相当)で、企業としては世界最大。ビットコイン価格上昇の恩恵を最大限に享受。
- レバレッジ効果: 株価はビットコイン価格の2-3倍のボラティリティで変動し、ビットコインETFよりもハイリスク・ハイリターン。
- NISA成長投資枠で保有可能: 米国株として保有可能で、NISA成長投資枠で非課税投資ができる点が日本人投資家にとって魅力。
(2) リスク要因(再掲)
- ビットコイン価格暴落リスク: 破綻水準はBTC価格16,500ドル(現在価格から90%超の下落が必要)。
- 株価プレミアムの急激な縮小リスク: BTC保有額の3倍評価が1倍に収束すれば株価67%下落。
(3) 向いている投資家
マイクロストラテジーは以下のような投資家に向いています:
- ビットコイン価格上昇の恩恵を受けたい積極的な投資家: 直接仮想通貨を保有することに抵抗があるが、ビットコイン関連投資をしたい方。
- 超高リスク・高ボラティリティに耐えられる方: 株価はビットコイン価格の2-3倍のボラティリティで変動するため、短期的な価格変動リスクに耐性がある方。
- NISA枠を使ってビットコイン関連投資をしたい方: NISA成長投資枠で非課税投資ができる点が魅力。
免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。マイクロストラテジーは超高リスク銘柄であり、ビットコイン価格暴落リスク、株価プレミアム縮小リスク、債務超過リスクがあります。最新情報はStrategy公式IRページや証券会社の情報をご確認ください。
Q: マイクロストラテジーの配当利回りは?
A: 無配です(2025年10月時点)。フリーキャッシュフローは全てビットコイン購入に充当しています。配当収入を期待する投資家には向きませんが、ビットコイン価格上昇による株価上昇を狙う投資家には魅力的です。
Q: マイクロストラテジーの主な競合は?
A: ビットコインETF(IBIT等)や他のBTC保有企業(Tesla等)です。ただし企業としては世界最大のBTC保有量(約63万BTC)で差別化しています。ビットコインETFは直接ビットコインに投資できますが、MSTRは株価がビットコイン価格の2-3倍のボラティリティで変動するレバレッジ効果があります。
Q: マイクロストラテジーのリスク要因は?
A: ビットコイン価格暴落リスク(破綻水準BTC価格16,500ドル)、株価プレミアムの急激な縮小リスク(BTC保有額の3倍評価が1倍に収束すれば株価67%下落)、巨額債務による債務超過リスク、証券詐欺訴訟(2025年Q1に59.1億ドルの未実現損失を計上)などがあります。詳細は本文の「5. リスク要因」を参照してください。
Q: マイクロストラテジーは長期投資に向いている?
A: ビットコイン価格上昇の恩恵を受けたい積極的な投資家に向いています。アナリストコンセンサスは「強気買い」で、長期予測では2030年に831.46~1,309.55ドル(ROI 325%超)です。ただし超高リスク・高ボラティリティ銘柄のため、仮想通貨の暴落リスクに耐えられる方向けです。投資判断はご自身で行ってください。
Q: マイクロストラテジーは破綻しないのか?
A: CryptoQuantのCEOは「BTC価格が16,500ドルまで下落しない限り破綻は非現実的(現在価格から90%超の下落が必要)」と分析しています。ただし、2025年Q1に59.1億ドルの未実現損失を計上し、巨額の負債を抱えているため、理論的には破綻可能性はゼロではありません。投資判断はご自身で行ってください。
