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メルカドリブレ (MELI)

MercadoLibre Inc.

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/10/26

0. この記事でわかること

本記事では、メルカドリブレ(MELI)について以下の情報を提供します:

  • なぜ注目されているのか: 中南米最大のEコマース・フィンテック企業として、ラテンアメリカのデジタル化加速と金融包摂の恩恵を受ける成長ポテンシャル
  • 事業内容と成長戦略: Eコマースプラットフォーム(Mercado Libre)とフィンテック(Mercado Pago)の2本柱で、物流・決済・広告を統合したエコシステムを構築
  • 競合との差別化: 自社物流網とフィンテック統合でAmazonや地場企業と差別化し、中南米でNo.1シェアを維持
  • 財務・配当の実績: 売上高成長率30-60%を継続する無配の高成長株。ブラジル・アルゼンチン・メキシコの3ヶ国で売上の96%を占める
  • リスク要因: アルゼンチン・ブラジルのハイパーインフレ・通貨安、マージン圧縮(無料配送拡大)、規制・競争リスク

この記事を通じて、メルカドリブレの成長性と投資リスクを理解し、投資判断の材料としてください。

1. なぜメルカドリブレ(MELI)が注目されているのか

メルカドリブレ(MercadoLibre Inc.)は「中南米のAmazon」と称される域内最大のEコマース・フィンテック企業です。中南米の人口6億人超、インターネット普及率60%超、Eコマース浸透率20%未満という成長余地の大きさが投資家の注目を集めています。

(1) 成長戦略の3つのポイント

メルカドリブレは以下の3つの成長戦略を推進しています(2025年Q1-Q2決算より):

  1. ブラジルにおける無料配送基準の引き下げとラストワンマイル物流への積極投資
    2025年に58億ドルを投資し、最新の物流ハブを建設中です。ブラジルで無料配送基準を引き下げた結果、GMV成長率が6月には34%(四半期全体では26%)に加速しました。配送の74%が48時間以内に完了しており、迅速な配送が競争優位性の源泉となっています。

  2. Mercado Pagoのフィンテック事業拡大
    月間アクティブユーザー6,800万人を擁し、クレジットカード発行枚数を四半期で150万枚増加、クレジット残高91%増の93億ドルに達しました。ラテンアメリカでは銀行口座保有率が低く(メキシコでブラジルの半分以下)、金融包摂の余地が大きいことが成長の追い風です。

  3. 広告事業の強化
    Mercado PlayアプリをTV向けに展開し、7,000万台以上のスマートTVで15,000時間以上のコンテンツを配信。広告収入は38%成長し、リテールメディア広告が新たな収益源として注目されています。

(2) 注目テーマ(ラテンアメリカのデジタルバンク化・AI・リテールメディア広告)

投資家が注目するテーマとして、以下の3つが挙げられます:

  • ラテンアメリカのデジタルバンク化: Mercado Pagoは決済・送金・融資・資産運用を提供するデジタルバンクとして機能しており、銀行口座を持たない層へのアクセスが拡大しています。
  • AI・クイックコマース統合: AI技術を活用した商品推薦やラストワンマイル配送の最適化により、ユーザー体験を向上させています。
  • リテールメディア広告: Amazonと同様、プラットフォーム上の広告収入が急成長しており、高マージンの収益源として期待されています。

(3) 投資家の関心・懸念点

関心点:

  • 中南米eコマース市場は現在1,500億ドルから4-5年で50%成長予測されており、同社は市場成長の50%超のシェアを獲得する見通しです。
  • アナリストコンセンサスは「強気買い」で、平均目標株価2,799ドル(31%上昇余地、2025年10月時点)。収益とEPSはそれぞれ年率19.1%、25.8%成長見込みです。

懸念点:

  • 営業利益率が210bp低下して12.2%、純利益率が7.7%に(無料配送拡大とプロモーション支出増加による短期的な収益性圧力)。
  • P/E倍率42.7倍は業界平均25.5倍を大きく上回る高バリュエーション。
  • アルゼンチンの通貨変動で為替損失1億1,700万ドル(前年比2倍)が発生しています。

2. メルカドリブレの事業内容・成長戦略

(1) 主力事業(Eコマース・フィンテック・広告)

メルカドリブレは5つのビジネスユニットで構成されています:

  1. MarketPlace(Eコマース): 中南米最大のマーケットプレイス。GMV500億ドル超(2025年Q2時点)。月間アクティブ購入者数21%成長で2020年以来の高水準。
  2. Mercado Pago(決済・フィンテック): QRコード決済・送金・融資・資産運用を提供。総決済取引高(TPV)166%増。
  3. Mercado Publicado(広告): プラットフォーム上の広告サービス。広告収入38%成長。
  4. Mercado Shops(エコシステム強化): 販売業者向けのEコマースツール提供。
  5. Mercado Crédito(クレジット): クレジットカード発行・融資サービス。債権残高93億ドル(91%増)。

(2) セクター・業種の説明(一般消費財・総合小売)

メルカドリブレはConsumer Discretionary(一般消費財)セクターBroadline Retail(総合小売)業種に分類されます。総合小売業種は、幅広い商品カテゴリーを扱うオンライン・オフライン小売を指します。中南米では、Eコマース浸透率が先進国より10年遅れており(現在1,500億ドルの市場が4-5年で50%成長予測)、同社は市場成長の恩恵を最大限に享受できる位置にあります。

(3) ビジネスモデルの特徴(エコシステム統合戦略)

メルカドリブレの最大の特徴は、Eコマース・物流・決済・広告を統合したエコシステムです。このエコシステムにより、以下のネットワーク効果が生まれています:

  • クロスユーザー促進: Eコマースユーザーが決済サービスを利用し、決済ユーザーがEコマースで購入する循環。
  • データ活用: 購入・決済データをAIで分析し、商品推薦・在庫管理・与信審査に活用。
  • シナジー創出: 自社物流網で48時間以内の配送を実現し、Mercado Pagoで決済手数料を最適化。

2013年から自社物流サービス「Mercado Envios」を運営し、全物流の50%以上を自社で処理。ブラジル5ヶ所、メキシコ1ヶ所に新規フルフィルメントセンターを建設中です。

3. 競合との差別化

(1) 主要競合企業(Amazon・地場小売)

メルカドリブレの主要競合は以下の3社です:

  1. Amazon: ブラジルでPrimeを開始し、中南米での存在感を強めています。物流網とブランド力が強み。
  2. B2W(Americanas): ブラジル最大の地場Eコマース企業。オフライン店舗との連携が強み。
  3. Via Varejo(Casas Bahia): ブラジルの老舗小売。分割払い・家電に強い。

(2) 競合優位性(自社物流網・フィンテック統合)

メルカドリブレの競争優位性は以下の3点です:

  1. 自社物流網: Amazonにはない地域密着型の配送網を構築。配送の74%が48時間以内に完了し、迅速性でリード。
  2. フィンテック統合: Mercado PagoでAmazonにない金融サービス(クレジット・送金・資産運用)を提供。銀行口座を持たない層へのアクセスが競合優位。
  3. 地域特化: 中南米の言語・文化・決済習慣に最適化されたUI/UX。分割払い文化に対応したクレジットサービス。

(3) 市場でのポジショニング(中南米No.1シェア)

メルカドリブレはラテンアメリカ全域でNo.1のマーケットシェアを持ちます。主要市場はブラジル(売上の60%)、アルゼンチン(20%)、メキシコ(15%)で、3ヶ国で売上の96%を占めます。今後の地理的拡大余地が大きく、チリ・コロンビア・ペルーへの進出も期待されています。

ROIC(投下資本利益率)18%でS&P500構成銘柄の上位20%に位置し、資本効率の高さが評価されています。

4. 財務・配当の実績

(1) 売上高・利益の推移(30-60%成長継続)

メルカドリブレは売上高成長率30-60%を継続する高成長株です。以下は最新決算(2025年Q1-Q2)の実績です:

項目 2025年Q1 2025年Q2 前年比成長率
純収益 59億ドル 67.9億ドル 34-37%
純利益 4.94億ドル 営業利益8.25億ドル(過去最高) 44%
GMV成長率 26% 34%(6月) -
Mercado Pago月間アクティブユーザー - 6,800万人 -
クレジット残高 - 93億ドル 91%

(出典: MercadoLibre Investor Relations, 2025年Q1-Q2決算, Nasdaq, Yahoo Finance)

財務ハイライト:

  • 収益成長率19.1%、EPS成長率27.1%(年率)の予測(アナリストコンセンサス)。
  • 調整後EBITDA 7.14億ドルは予想9.23億ドルを下回るが、無料配送拡大による一時的なマージン圧縮と見られています。

(2) 配当履歴(無配の高成長株)

メルカドリブレは無配です(2025年10月時点)。同社は配当を出さず、フリーキャッシュフローを物流インフラ・フィンテック拡大に再投資しています。配当を期待する投資家には向きませんが、成長による株価上昇を狙う投資家には魅力的です。

(3) 財務健全性(ROIC 18%)

  • ROIC(投下資本利益率): 18%でS&P500構成銘柄の上位20%。資本効率の高さが評価されています。
  • ROE予測: 33.5%(3年後)で、高い株主資本利益率が見込まれています。
  • 有利子負債: 詳細は10-Kで確認できますが、フィンテック事業の債権残高93億ドルが主要な投下資本です。

※2025年10月時点のデータです。最新情報はMercadoLibre公式IRページをご確認ください。
(出典: MercadoLibre Inc. 10-K 2024, SEC EDGAR, TipRanks, Morningstar)

5. リスク要因

(1) 事業リスク(マージン圧縮・短期収益性圧力)

メルカドリブレは以下の事業リスクを抱えています:

  • マージン圧縮: 営業利益率が210bp低下して12.2%、純利益率が7.7%に(無料配送拡大とプロモーション支出増加による)。短期的な収益性圧力が懸念されています。
  • クレジットカード事業拡大による圧力: クレジットカード事業拡大(TPV 166%増、債権172%増)が短期収益性に圧力をかけています。
  • 高バリュエーション: P/E倍率42.7倍は業界平均25.5倍を大きく上回り、株価下落リスクがあります。

(2) 市場環境リスク(アルゼンチン・ブラジルのインフレ・通貨安)

  • アルゼンチンのハイパーインフレ: 年率100%超のインフレとペソ急落が業績に影響。2025年Q2で為替損失1億1,700万ドル(前年比2倍)が発生しました。
  • ブラジル・レアルの変動: 売上の60%を占めるブラジルの通貨安が為替リスクとなります。
  • 地域集中リスク: 売上の96%がブラジル、アルゼンチン、メキシコの3ヶ国からで、地域分散が課題です。
  • 為替レート変動: 1ドル=140-150円のレンジで推移(2025年10月時点)しており、円高時には為替差損が発生します。

(3) 規制・競争リスク(データ保護法・決済規制・Amazon参入)

  • 規制リスク: 中南米各国の消費者保護法、データ保護法、決済規制が事業に影響を及ぼす可能性があります。
  • 競争激化: Amazonのブラジル参入強化(Prime開始)により、競争が激化しています。
  • ラテンアメリカ諸国の経済不安定性: 急成長に悪影響を及ぼすリスクがあります。

6. まとめ:投資判断のポイント

(1) この銘柄の強み

メルカドリブレの強みは以下の3点です:

  1. 中南米No.1のマーケットシェア: ラテンアメリカ全域で圧倒的な存在感。Eコマース市場の成長余地が大きく、今後4-5年で50%成長が見込まれます。
  2. エコシステム統合戦略: Eコマース・物流・決済・広告を統合し、ネットワーク効果で競争優位を確立。ROIC 18%で資本効率が高い。
  3. フィンテック事業の成長: 銀行口座を持たない層へのアクセスが拡大し、金融包摂の恩恵を享受。クレジット残高93億ドル(91%増)。

(2) リスク要因(再掲)

  • 短期的な収益性圧力: マージン圧縮(営業利益率12.2%に低下)と高バリュエーション(P/E倍率42.7倍)。
  • 新興国リスク: アルゼンチン・ブラジルのハイパーインフレ・通貨安、地域集中リスク(3ヶ国で売上の96%)。

(3) 向いている投資家

メルカドリブレは以下のような投資家に向いています:

  • 新興国Eコマース・フィンテックの成長性に注目する積極的な中級投資家: 中南米のデジタル化加速と金融包摂に期待できる方。
  • 長期投資(5-10年)を検討している方: 無配ですが、株価上昇による資産形成を狙える方。
  • 新興国リスクに耐えられる方: ハイパーインフレ・通貨安・政治不安に耐性がある方。

免責事項: 本記事は情報提供を目的としており、個別銘柄の推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。最新情報はMercadoLibre公式IRページや証券会社の情報をご確認ください。

Q: メルカドリブレの配当利回りは?

A: 無配です(2025年10月時点)。同社は配当を出さず、フリーキャッシュフローを物流インフラ・フィンテック拡大に再投資しています。配当収入を期待する投資家には向きませんが、成長による株価上昇を狙う投資家には魅力的です。

Q: メルカドリブレの主な競合は?

A: Amazonと地場企業(B2W、Via Varejo等)です。ただし自社物流網とフィンテック統合で差別化しており、中南米でNo.1シェアを維持しています。Amazonにはない金融サービス(クレジット・送金・資産運用)を提供し、銀行口座を持たない層へのアクセスが競合優位となっています。

Q: メルカドリブレのリスク要因は?

A: アルゼンチン・ブラジルのハイパーインフレ・通貨安(為替損失1億1,700万ドル)、マージン圧縮(営業利益率12.2%に低下、無料配送拡大・プロモーション支出増)、規制リスク(消費者保護法、データ保護法、決済規制)、競争激化(Amazon参入)などがあります。詳細は本文の「5. リスク要因」を参照してください。

Q: メルカドリブレは長期投資に向いている?

A: 新興国Eコマース・フィンテックの成長性に注目する積極的な中級投資家に向いています。中南米eコマース市場は4-5年で50%成長が見込まれ、同社は市場成長の50%超のシェアを獲得する見通しです。ただし新興国リスク(ハイパーインフレ・通貨安・政治不安)に耐えられる方向けです。投資判断はご自身で行ってください。

よくある質問

Q1メルカドリブレの配当利回りは?

A1無配です(2025年10月時点)。同社は配当を出さず、フリーキャッシュフローを物流インフラ・フィンテック拡大に再投資しています。配当収入を期待する投資家には向きませんが、成長による株価上昇を狙う投資家には魅力的です。

Q2メルカドリブレの主な競合は?

A2Amazonと地場企業(B2W、Via Varejo等)です。ただし自社物流網とフィンテック統合で差別化しており、中南米でNo.1シェアを維持しています。Amazonにはない金融サービス(クレジット・送金・資産運用)を提供し、銀行口座を持たない層へのアクセスが競合優位となっています。

Q3メルカドリブレのリスク要因は?

A3アルゼンチン・ブラジルのハイパーインフレ・通貨安(為替損失1億1,700万ドル)、マージン圧縮(営業利益率12.2%に低下、無料配送拡大・プロモーション支出増)、規制リスク(消費者保護法、データ保護法、決済規制)、競争激化(Amazon参入)などがあります。詳細は本文の「5. リスク要因」を参照してください。

Q4メルカドリブレは長期投資に向いている?

A4新興国Eコマース・フィンテックの成長性に注目する積極的な中級投資家に向いています。中南米eコマース市場は4-5年で50%成長が見込まれ、同社は市場成長の50%超のシェアを獲得する見通しです。ただし新興国リスク(ハイパーインフレ・通貨安・政治不安)に耐えられる方向けです。投資判断はご自身で行ってください。

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Single Stock編集部

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