米国株高配当銘柄の選び方 - 配当利回りとリスクを理解した投資術

著者: Single Stock編集部公開日: 2025/11/21

米国株の高配当銘柄に注目する理由

米国株の高配当銘柄に興味はあるものの、「配当利回りだけを見て選んでいいのか?」「減配リスクはないのか?」と不安に感じている方は多いのではないでしょうか。

高配当株投資は安定した配当収入を得られる魅力的な投資方法ですが、配当利回りだけで判断すると思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。

この記事では、米国株の高配当銘柄を選ぶ際の重要なチェックポイントと、配当貴族や配当王といった連続増配株の魅力、セクター別の特徴、そして高配当株特有のリスクについて解説します。

この記事のポイント:

  • 配当利回りは3-5%が健全な目安。異常に高い利回りは株価下落の結果である可能性がある
  • 配当性向・連続増配年数・財務健全性の4つをチェックすることが重要
  • 配当貴族(25年以上連続増配)・配当王(50年以上連続増配)は財務安定性の証
  • セクター分散(公益・エネルギー・通信・REIT)でリスクを軽減
  • 二重課税(米国10%+日本20.315%)と為替リスクに注意

米国株の高配当銘柄に注目する理由

日本から米国株の高配当銘柄へ投資する理由は、大きく2つあります。

(1) 日本株を上回る配当利回り(4-8%台が中心)

米国の高配当株は、日本株と比較して配当利回りが高い傾向にあります。例えば、2025年時点でアルトリア(MO)は配当利回り約8.87%、AT&Tは約5%台と、日本株の平均配当利回り2-3%を大きく上回っています。

ただし、異常に高い配当利回り(10%超)は警告サインとなる場合もあります。株価が大幅に下落した結果として利回りが上昇している可能性があり、減配リスクに注意が必要です。

(2) 配当の増配文化が根付いている米国市場

米国市場では、株主還元として配当を継続的に増やす「増配文化」が根付いています。S&P500構成銘柄の中には、25年以上連続増配している「配当貴族(Dividend Aristocrat)」や、50年以上連続増配している「配当王(Dividend King)」と呼ばれる企業が存在します。

例えば、コカ・コーラは63年連続、アルトリアは56年連続で増配を続けています。このような長期増配実績は、企業の財務健全性と株主還元への強い姿勢を示しています。

高配当株の選び方:4つのチェックポイント

高配当株を選ぶ際には、配当利回りだけでなく、以下の4つのポイントを総合的にチェックすることが重要です。

(1) 配当利回り(目安は3-5%、異常に高い利回りは要注意)

配当利回りは「年間配当金÷株価」で計算され、投資額に対する配当収入の割合を示します。

健全な配当利回りの目安は3-5%程度とされています。4-5%台の銘柄であれば、日本株より高い配当収入を得つつ、安定性も期待できます。

一方、8-10%を超える異常に高い配当利回りは、株価が大幅に下落した結果である可能性があります。業績悪化や減配リスクが隠れていないか、慎重に確認する必要があります。

(2) 配当性向(100%超は減配リスク大)

配当性向(Payout Ratio)は「配当金÷純利益」で計算され、企業が利益のうち何%を配当に回しているかを示す指標です。

配当性向が100%を超えている場合、企業は利益以上に配当を支払っていることになり、持続不可能な状態と言えます。このような銘柄は、業績が悪化した際に減配リスクが高くなります。

健全な配当性向は業種によって異なりますが、一般的には40-60%程度が適正範囲とされています。

(3) 連続増配年数(長いほど財務健全性が高い)

連続増配年数は、企業が何年にわたって配当金を増やし続けているかを示す指標です。

25年以上連続増配している企業は「配当貴族」、50年以上連続増配している企業は「配当王」と呼ばれ、高い財務健全性と株主還元への強いコミットメントを示しています。

例えば、2025年11月時点で注目されている配当貴族には、ニュコア(NUE)、ペプシコ(PEP)などがあります。

(4) 財務健全性(負債比率・フリーキャッシュフロー)

配当を持続的に支払うためには、企業の財務基盤が健全である必要があります。

負債比率(負債÷総資産)が高すぎる企業は、景気悪化時に配当を維持できなくなるリスクがあります。また、フリーキャッシュフロー(営業活動で得た現金-投資活動に使った現金)がプラスであることも重要です。フリーキャッシュフローが潤沢であれば、配当を支払う余力があると判断できます。

配当貴族と配当王:連続増配株の魅力

連続増配株は、長期的な配当成長を重視する投資家にとって魅力的な選択肢です。

(1) 配当貴族とは(S&P500構成で25年以上連続増配)

配当貴族(Dividend Aristocrat)とは、S&P500構成銘柄で25年以上連続増配している企業を指します。

2025年11月時点で注目されている配当貴族には、以下のような銘柄があります:

  • ニュコア(NUE): 配当利回り約1.48%、鉄鋼メーカーとして安定した増配実績
  • ペプシコ(PEP): 配当利回り約4%、食品・飲料業界の大手

配当貴族は、景気の変動に耐えながら配当を増やし続けてきた実績があり、長期投資に適した銘柄と言えます。

(2) 配当王とは(50年以上連続増配、コカ・コーラ等)

配当王(Dividend King)とは、50年以上連続増配している企業を指します。配当貴族よりもさらに厳しい基準であり、極めて高い財務安定性を示しています。

代表的な配当王には、以下のような銘柄があります:

  • コカ・コーラ(KO): 63年連続増配
  • アルトリア(MO): 56年連続増配

これらの企業は、数十年にわたって株主還元を続けてきた実績があり、長期的な配当成長を期待できます。

(3) 2025年注目の配当貴族3銘柄

2025年11月、ウォール街のアナリストが推奨している配当株には、以下の3銘柄があります(CNBC調べ):

  • ダイアモンドバック・エネルギー(FANG): エネルギーセクター、第3四半期に8.92億ドルを株主還元
  • デューク・エネルギー(DUK): 公益セクター、安定した配当実績
  • バレロ・エネルギー(VLO): エネルギーセクター、景気連動型だが高配当

これらの銘柄は、セクター分散を意識した投資先として注目されています。

セクター別の高配当株の特徴

高配当株はセクターによって特徴が異なります。分散投資を行う際には、各セクターの特性を理解しておくことが重要です。

(1) 公益セクター(デューク・エネルギー等、安定配当)

公益セクター(電力・ガス・水道等)は、景気変動の影響を受けにくく、安定した配当を期待できます。

例えば、デューク・エネルギー(DUK)は、米国の主要電力会社として長年にわたり安定した配当を維持しています。公益セクターは規制業種であるため、急激な収益変動が少なく、配当の安定性が高いのが特徴です。

(2) エネルギーセクター(バレロ・エネルギー等、景気連動)

エネルギーセクターは、原油価格や景気動向に左右されやすいものの、高配当銘柄が多いセクターです。

例えば、バレロ・エネルギー(VLO)やダイアモンドバック・エネルギー(FANG)は、エネルギー価格が高い時期には高い配当を実現できますが、価格下落時には減配リスクもあります。

エネルギーセクターへの投資は、他のセクターと組み合わせて分散することが推奨されます。

(3) 通信セクター(AT&T等、高利回り・減配リスク注意)

通信セクターは、高い配当利回りが魅力ですが、減配リスクにも注意が必要です。

例えば、AT&Tは2025-2027年の間に財務余力約500億ドルのうち200億ドル以上を配当に充てる計画を発表しています。配当利回りは約5%台と高めですが、過去には減配した実績もあり、財務健全性を慎重にチェックする必要があります。

(4) REIT(リアルティ・インカム等、月次配当)

REIT(Real Estate Investment Trust、不動産投資信託)は、不動産を運用し、賃料収入等を配当として分配する仕組みです。

例えば、リアルティ・インカムは1994年の上場以来132回の増配を実施し、配当の年平均成長率は4.3%に達しています。月次配当を行っているため、毎月安定した配当収入を得られるのが特徴です。

REITは、株式とは異なるリスク・リターン特性を持つため、ポートフォリオの分散に役立ちます。

高配当株投資のリスクと注意点

高配当株投資には、以下のようなリスクと注意点があります。

(1) 配当罠(Dividend Trap):株価下落で利回りが見かけ上高くなる

配当罠(Dividend Trap)とは、株価が大幅に下落した結果、配当利回りが見かけ上高くなっている状態を指します。

例えば、ある企業が年間配当3ドルを支払っている場合、株価が100ドルなら配当利回りは3%ですが、株価が30ドルに下落すれば配当利回りは10%になります。しかし、この高利回りは業績悪化の兆候であり、減配リスクが高い可能性があります。

異常に高い配当利回り(10%超)を見かけた場合は、株価チャートや業績動向を確認し、配当罠でないか慎重に判断する必要があります。

(2) 減配リスク(業績悪化・配当性向超過)

配当は企業の利益から支払われるため、業績が悪化すれば減配される可能性があります。

特に、配当性向が100%を超えている企業や、負債が多い企業は、減配リスクが高いと言えます。財務健全性を定期的にチェックし、減配リスクを見極めることが重要です。

(3) 二重課税(米国と日本で課税、外国税額控除で軽減可能)

米国株の配当には、米国と日本の両方で税金がかかります(二重課税)。外国税額控除という制度で軽減できる場合があります。詳細な税率や計算方法については、税理士や国税庁のウェブサイトをご確認ください。

※2025年11月時点の税制です。最新情報は国税庁のウェブサイトをご確認ください。

(4) 為替リスク(円高時に円換算の配当金が減少)

米国株の配当はドル建てで支払われるため、為替レートの変動により円換算での配当金が増減します。

例えば、年間配当100ドルの場合、1ドル=150円なら15,000円ですが、1ドル=100円になれば10,000円に減少します。ドル建ての配当利回りが高くても、円高になれば円換算での配当金は減少するため、為替リスクを考慮する必要があります。

為替タイミングを読むのは難しいため、長期保有とドルコスト平均法での分散購入が推奨されます。

まとめ:長期的な配当成長を重視した銘柄選び

米国株の高配当銘柄は、安定した配当収入を得る魅力的な投資先ですが、配当利回りだけで選ぶのではなく、配当性向・連続増配年数・財務健全性を総合的にチェックすることが重要です。

次のアクション:

  • 配当貴族や配当王の銘柄リストを確認する
  • セクター分散を意識してポートフォリオを組む
  • 証券会社で配当利回りランキングを活用する
  • 二重課税対策として外国税額控除の手続きを理解する

長期的な配当成長を重視し、財務健全性の高い銘柄を選ぶことで、安定した資産形成を目指しましょう。

よくある質問

Q1米国株の高配当利回りはどれくらいが妥当ですか?

A13-5%が健全な目安です。4-5%台であれば日本株より高い配当収入を得つつ、安定性も期待できます。一方、8-10%を超える異常に高い利回りは、株価が大幅に下落した結果である可能性が高く、減配リスクを確認する必要があります。

Q2配当貴族や配当王とは何ですか?

A2配当貴族はS&P500構成銘柄で25年以上連続増配している企業、配当王は50年以上連続増配している企業を指します。コカ・コーラは63年連続、アルトリアは56年連続で増配を続けており、極めて高い財務健全性を示しています。

Q3米国株の配当金にかかる税金はどうなりますか?

A3米国株の配当には、米国と日本の両方で税金がかかります(二重課税)。外国税額控除という制度で軽減できる場合があります。詳細な税率や計算方法については、税理士や国税庁のウェブサイトをご確認ください。

Q4為替リスクはどう考えればいいですか?

A4米国株の配当はドル建てで支払われるため、為替レートの変動により円換算での配当金が増減します。ドル高なら円換算で増えますが、円高だと減少します。為替タイミングを読むのは難しいため、長期保有とドルコスト平均法での分散購入が推奨されます。

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Single Stock編集部

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